Official髭男dism『宿命』の歌詞から読み解く応援歌の変化について

コラム

こんにちはかさこです。

ここ最近、話題となっているアーティストといえばOfficial髭男dismではないでしょうか。

映画、アニメのタイアップ、武道館公演とその知名度を高めています。

そんな”ヒゲダン”の曲『宿命』が2019年ABC 夏の高校野球応援ソング、『熱闘甲子園』のテーマソングに起用されました。

ポップさ、メロディの美しさを感じるヒゲダンらしい応援歌となっています。

今回はこの歌詞にフォーカスし、応援歌の変化についてお話ししたいと思います。

『宿命』の歌詞分析

まずは『宿命』の歌詞について詳しく見ていきたいと思います。

カメラワーク的なAメロ

Aメロは風景を描写しており、冒頭の歌詞

心臓からあふれ出した声で歌うメロディ

は観客席の応援団へのフォーカス

君からあふれ出した声と

は選手へのフォーカス

〜群青の空の下

は引きの絵

となっています。

お好きな方ならわかると思いますが、このカメラワークはまさしく熱闘甲子園のOP映像そのものですよね。

Bメロ 繰り返しの表現

夢じゃない夢じゃない〜

嘘じゃない嘘じゃない〜

Bメロで押さえておきたいのがこの繰り返しの表現です。

繰り返しの働きには主に二種類あります。

一つは意味の強調です。

繰り返すことで、その歌詞の意味を強めます。

この歌の中では、応援している「僕ら」から「選手」に向けて言い聞かせているようなニュアンスでしょうか。

そしてもう一つはリズムを生み出すことです。

歌詞だけではなく、詩でも用いられる繰り返しですが、読み手にリズムを与える役割を持ちます。

歌詞はそもそも詩を歌に乗せるのですから、より相性の良い表現技法とも言えるでしょう。

この歌でも落ち着いたAメロから盛り上がるサビへとだんだんと加速していくような感じを受けますよね。

さらにサビ前の「届け」で音抜きされていてグッと引き込まれます。

押韻を効果的に使ったサビ

ヒゲダンの楽曲全体に言えることですが、藤原さんは押韻を効果的に活用しています。

押韻とは母音が同じあるいは響きの近い母音を繰り返し用いることです。

繰り返しの表現と同じく、詩によりリズムを生み出すほか、耳触りの良さを感じさせることができます。

このサビでも

奇跡じゃなくていい(母音がauei-)

美しくなくていい

切れないバッテリー(a[u]ei-)

魂の限り(aii-)

というように押韻が用いられています。

ヒゲダンはR &Bを感じさせるリズムの使い方をする楽曲が多いですので、押韻や繰り返しがより活きてきているのではないでしょうか。

さらにこのサビではバッテリーが宿命を燃やす比喩と野球の投手と捕手を示す掛詞として用いられています。

相撲をテーマとしたアニメ『火ノ丸相撲』のOPとして採用された『FIRE GROUND』でも相撲に関連した

結果次第で180度真っ白な歓声に変わる

それでも弾かれまいと世界を両足で握りしめる

残ったのはどっちだ

といった掛詞をうまく活用していますし、

詐欺をテーマにした『コンフィデンスマンJP』の主題歌『ノーダウト』『Pretender』でも随所に見られます。

こういったタイアップ、主題歌のテーマをうまく織り交ぜながら歌詞を書く技術が、次々タイアップされる一つの要因ではないでしょうか。

応援歌の変化

特筆したいのが、2番Aメロの歌詞

「大丈夫」や「頑張れ」って歌詞に苛立ってしまった

そんな夜もあった

という箇所

応援歌といえば、古くはKANの『愛は勝つ』やZARD『負けないで』や

同じく熱闘甲子園テーマ曲の『あとひとつ』など、背中を押してくれる熱いメッセージの曲が有名でした。

それに対してこの曲は今までのそういった応援歌に対するメタ的な表現になっています。

「無責任な応援に苛立つ」という感覚は私も含め若い世代には共感するのではないでしょうか。

この曲はそういった応援歌を聴く気になれない層にも響くのではないでしょうか。

こういったカウンター的な歌詞は2017年の熱闘甲子園テーマであった高橋優『虹』でも見られます。

少し前の僕だったらここらで諦めてたな

適当に言い逃れ”まあこれで十分だろ自分らしいや”と

2000年代以降、自分らしさを大切にしようという風潮がありました。

ゆとり教育や『世界に一つだけの花』のヒットもそういった流れの一つと言えるでしょう。

その自分らしさを盾に頑張ることを避けてしまったことに切り込んだ歌詞というのは新鮮に感じました。

音楽をはじめ、流行を生み出すコンテンツはその世情や時代背景を切り取るひとつのツールとしての役割を担っています。

応援歌ひとつとってもこういった世代間の考え方の違いや時代が現れているのは面白いですよね。

まとめ

今回はOfficial髭男dismの『宿命』の歌詞分析、そして応援歌の変化についてお話ししました。

皆さんもこういった背景を考えながら音楽を聴いてみるとまた違った良さを感じられるのではないでしょうか。

作詞をする方も彼らの楽曲は技術が詰まっていますので是非参考にしてみてください。


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